藤崎ルキノ(女優)
福岡県出身

2000年山口洋輝監督作品『ハテシナイタメイキ』 にて京都シネック映画祭主演女優賞受賞をはじめ、海外でも評価の高い『グシャノビンヅメ』(プチョン国際ファンタスティック映画祭招待ほか)などの主演をつとめるなど演技派女優として活躍。

■ 藤崎ルキノオフィシャルウェブサイト『ルキノドロップス』 http://luchino7.com/

純吉(以下、純):藤崎さん、宜しくお願いします。
藤崎ルキノ(以下、ル):はい、宜しくお願いします。
純:では、まずはお芝居を始めるようになったキッカケを教えてもらってもいいですか?
ル:ん〜、そうですね、山口監督の「ハテシナイタメイキ」という作品に
  出させてもらって、実際に触れてから興味が湧いたという感じですね。
  きっかけとしては。
純:なるほど、では演技というものはどこかでやられてたんですか?
ル:いえ、それまではお芝居の経験は全く無かったですね。
純:という事は経験ナシでいきなり映画に出演されたのですか?
ル:そうですね。とはいっても学生映画ですけど・・・。
純:すごいな。その後、同じく山口監督の「グシャノビンヅメ」で
  なんと主演という大役に抜擢されたワケなんですよね。
ル:はい。

純:大勢のスタッフに囲まれて、プレッシャーとかはなかったですか?
ル:緊張するとかは特に無かったんですけど、何しろ初めての事で分からない
  事だらけだったので、周りの役者の方々にいろいろ教えていただきました。
  殴られた時の、受け身の取り方ですとか、特に技術的な部分で。

純:ははは、大物ですね!ではやってみて女優の魅力、面白さとは?
ル:私、物事にすごい飽きっぽいほうなんですよね、基本的に。
  でもお芝居には飽きることがない。ここが到達点ということが
  無いからだと思うんですけど、突き詰めようと思ったらどこまでも
  掘り下げていけるというか。作品によって求められるものも全然違いますし、
  毎回新鮮な気持ちでやらせてもらってますね。

純:では完成した自分のお芝居を見てみてどうですか?
ル:ダメ出しばっかりですね(笑)。繰り返し観てみてやっと馴染んで、
  自分の出演している作品を一つの作品として観る事ができるようになる感じです。

純:好きな役者さん、憧れた役者さんはいますか?
ル:日本で、見た目やお芝居、佇まいが好きなのは中谷美紀さんでしょうか。
  「ケイゾク」は特に好きでした。
純:いいですよね〜、僕も大好きです。海外の方で誰かいますか?
ル:海外の女優では、エマニュエル・ベアールさん。
  最近だとフランソワ・オゾン監督の「8人の女達」という映画に
  出てた方なんですが、顔立ちがまさに『ロリータ!』って感じで。
  日本で言うところのいわゆる『ロリコン』系の顔ではなくて、
  フランス人の想像するロリータ顔という感じ。唇がぽってりしていて、
  ちょっとエロティックな。

純:では男の俳優さんではどうでしょうか?
ル:浅野忠信さんは、見た目も好きですし、お芝居もどの作品を観ても
  すごいと思いますね。お芝居をしているというよりは、本当にその人自身として
  存在しているように見えてしまう。
  そこで観る側もぐっと感情移入させられてしまう。
  「地雷を踏んだらサヨウナラ」は特に印象に残ってますね。
純:見られる事は好きですか?
ル:嫌いじゃないから出来てるんじゃないかな、と思います・・・多分。
  カメラのレンズを向けられてる瞬間って、なんというか、
  すごくセクシーな時間だなって思うんです。
  あと、映画の現場の、あの独特な空気もすごく好き。

純:なるほど。では今、興味のある事はなんでしょうか?
ル:嶽本野ばらさんの小説に出てくるような耽美的な雰囲気のものたち。
  普段はあまり着ないですけど、ヴィヴィアンのお洋服を着てお茶会、
  とかいいですね・・・
純:他に好きな作家さんはいますか?
ル:そうですね、沢山いすぎてあげるのは難しいんですけど・・・
  梨木香歩さん、村上春樹さん、よしもとばななさん、村上龍さんも
  好きですし、その日の気分によって読みたい本も違いますね。
  最近読んでスゴイなと思ったのが、「ねじ巻鳥クロニクル」。
  すごく変わった作品で、あんなお話を書かれたのもすごいと思うし、
  ベストセラーになって各国で評価されているということも驚きですね。

純:今まで見た映画で結末が印象的だった作品とかありますか?
ル:結末ですか?そうですねぇ、石井輝男監督の「徳川刺青師責め地獄」
  という作品のエンディングはビックリしましたね。
純:へぇ、どういう風に?
ル:とにかく唖然、という感じですかね。京都の映画館でオールナイトで
  観ていたのですが、『完』の文字が画面に出た瞬間、観ていた人全員で
  大拍手してました。
純:では、好きな映画はありますか?
ル:「月曜日のユカ」。
  主演の加賀まり子さんがとにかくキュートで魅力的で。
  この作品の中の彼女は、まさに私のイメージする『小悪魔』ですね。
  わがままなんだけど、それが許されちゃうような、男の人を狂わせちゃうような。
純:なるほど、確かに今でも綺麗な方ですよね。
ル:ですよね〜。
  あとは石橋義正監督の「狂わせたいの」ですかね。
  コメディーっていうのかギャグっていうのか、エログロナンセンスって
  いうのか(笑)一見悪趣味なんですけど、好きですね。
  昭和歌謡盛りだくさんな所も。あまり万人にオススメはできないですけど。

純:あまりルキノさんの生活感が想像できないんですけれども、
  ご自宅にテレビってありますか?
ル:はい、ありますよ。
純:どんなの見るんですか?
ル:んー、DVDを借りて観る事が多くて、テレビはあんまり見ないですね。
  元々私、電気の音がダメなんですよ、電子音が。
  私の家は最近液晶テレビにしたんですけど、普通のブラウン管のテレビは
  ダメなんです。隣の部屋で付いてるのが分かっちゃうくらい、
  キーンていう音が聴こえて、頭が痛くなってしまうんです。
純:へぇー、それはシックスセンスとかではなく?
ル:違いますね、ただ単に音として聴こえちゃうんですよ。
純:もしかして、絶対音感ってありますか?
ル:あるみたいですね。でもそれとはあんまり関係ないような。
  そうそう、駅によく設置されているネズミ捕りの音も駄目ですね。
  キキキキーッていう感じの音。多分意識しなければ気にならない音だと
  思うんですけど、それがすごく耳についてしまって・・・
  例えば新宿駅だとJR南口改札内のコージーコーナーの前辺りとか。
  超音波が脳にダイレクトにくるような音で。
純:ネズミの感じてる嫌悪感を一緒に感じてるワケですよね。
ル:そうですね・・・
純:何かに使える特技でもないですしね(笑)。
ル:何の得にもならないですね。ただ不快なだけです(笑)。

純:では、好きな音楽とかありますか?
ル:フォークソングが好きで、それは父親の影響かもしれないですけど、
  初めて聞いたCDがチューリップと吉田拓郎さんだったんです。
  割と昔の曲をよく聞きますね。古井戸とか、猫とか、はっぴいえんどとか・・・
純:渋い!昭和の日本のフォークが好きと。
ル:そうですね、あと昔のアイドルの曲。松田聖子さん、天地真理さん、
  キャンディーズとか。

純:僕の9つ上の姉の世代なんですが、卒業アルバムを見るとみんな聖子ちゃんカット
  だったんですけど、ご自分もやってみたいと思いますか?
ル:あ、やってみたいかもしれないですね〜。あと、もう少し遡るんですけど、
  1960〜70年代に青春時代を過ごしてみたかったですね。当時のカルチャーが
  すごく好きで。勿論実際そうなったら、それはそれで現代より生きにくい部分も
  あるとは思うんですけど。鈴木いづみの本や、映画「同棲時代」とかの雰囲気も
  好きで、きっと憧れなんだと思います。
  
純:じゃあ、ルキノさんはどんな幼少時代だったんでしょう?
ル:母親に聞いた幼少時代のエピソードとしては、幼稚園の入園式の時のものが
  印象に残ってますね。みんなが静かに着席している中で突然わーっと走り出して、
  みんなが引き止める中どうしても舞台に上がろうとしたらしいです。
  でも、決して目立ちたがりな子供だったという訳ではなくて。
  むしろ人前で踊ったり唄ったりすることがすごく恥ずかしかった記憶があります。
  お遊戯の時間とかは一人だけ絶対踊らなかったらしいんですよ、先生の隣に立って
  腕組みしてみんなを見てたりとか、すごく可愛くない幼稚園児で
  「お母さんは恥ずかしかったわよ」なんて言われました。

(ここでメイクを笑われる。)

純:で、でわ、小学生はどうでした?
ル:小学校時代も変なところで目を付けられるこどもでした。
  成績が悪かったワケではなかったんですが、何でそんな事するの?みたいな。
  渡り廊下の塀の上を歩いて怒られましたね。
純:えっ!?
ル:落ちたら死ぬぞって、すっごい怒られました。
純:そりゃ、そうでしょうね。
ル:でも、やんちゃなわけではなく、むしろおとなしかったぐらいですね。
純:かなりブッ飛んでましたね。では中学生は?
ル:中学はクリスチャンの学校で、挨拶は「ごきげんよう」でした。
純:おお、お嬢様校だ!
ル:一応男女共学だったんですが、あまり男の子と話したりはできなかったですね。
純:部活動とかやってましたか?
ル:高校までずっとブラスバンドでクラリネットを6年間、毎日毎日やっていました。
純:すごいな。
ル:年に何日かしか休みもなくて、ずっと練習してましたね。

純:ちなみに初恋っていつごろでしょう?
ル:小学校の時だと思いますね。
  入学してすぐの時、隣の席になった男の子で6年間好きでしたね。
純:6年間?長いですね!バレンタインデーはチョコあげたりしたんですか?
ル:はい、あげました。
  その男の子がすごいもてる子だったので、仲のいい友達3人とも同じ子の事を
  好きで、みんなで私の家で手作りチョコを作って、一緒に渡しましたね。
純:幸せ者ですね〜。では本格的なのは中学校くらいからなのかな?
ル:そうですね、とはいっても中学の時は男の子と喋っちゃいけない
  校風だったので、毎週木曜日に手紙の交換をするくらいでしたけど・・・
純:文通!?久々に聞いたなぁ!
ル:便箋とかにすごくこだわってましたね。下書きとか何回もして。
純:可愛らしいですね!では男性の好みのタイプとかありますか?
ル:うーん、タイプっていうのは特にないんですれど・・・ずばり見た目ですね。
  見た目の第一印象。昔は外見は関係ないとか思ってたんですけど、
  最近はその人の在り方って、かなり見た目に表れてるなぁと思うんですね。
純:なるほど、生き様というのは外見にも出ると。
ル:私はそう思います。
  
純:友人関係はどうでしょうか?
ル:友達は少ない方だと思います。
純:すごく多そうですけどね。
ル:そうですか?人数は少ないんですが、面白い方が多いですね。
  私、割と一人でぼーっと過ごす時間が好きなほうで、友人ともしょっちゅう
  会うわけではないんですよ。けど切れてしまうわけではなくて、
  会う機会は少なくてもお互い何となく気持ちが通じてるような感じです。

(またメイクを笑われる。)

純:突然ですが、携帯の着メロは何ですか?
ル:え〜っとですねぇ、(ごそごそ)「あーっ、電話だぁ〜。」
純:で、ではメールは?
ル:似てますよ(ごそごそ)「メールだぁ〜、素敵ぃ〜。」
  両方とも、『OH!スーパーミルクちゃん』っていうアニメの
  キャラクターの声なんですけど。かなり好きなアニメですね。

純:ご自分の好きな部分、嫌いな部分は?
ル:うーん・・・考えたんですけど、自分について、好きとか嫌いとか
  あんまり思った事無いですね。

 純:哲学みたいなものってあったりしますか?
 ル:シンプルに、やりたい事をやる、ということ。
   今まで、あのときこうしてれば良かった、とか後悔した事ってあまりないですね。
 純:いつでも我が人生悔いなしですか?
 ル:明日死んでしまう、となったらやり残した事はいっぱいありますけど!
 純:では、明日世界が終わるとしたら何をしたいですか?
 ル:家族全員で一緒にいたいです。

 純:では役者として心がけていることは。
 ル:一般社会人としての礼儀でしょうか。役者をやっているからといって特別だと
   いう事なんてないと思うし、沢山ある仕事の中の一つの選択肢だと思うんです。
   謙虚な姿勢ですとか、周りに対する気配りはなくしたくないですね。
   そういった部分をつい忘れてしまったりもする環境にあると思うので。
 純:基本だからこそ、大事なんですね。
 ル:そうですね。
 純:今日はいろんなお話を聞かせてもらえました、ありがとうございました。
 ル:楽しかったです!ありがとうございました。


いや〜、今回のインタビュー&撮影は僕自身初の試みだったのでかなり緊張しました。何はともあれ、ゲストに助けてもらいましたね。何よりルキノさん、素材として素晴らしかった。カメラマンの三浦君も絶賛でしたしね。インタビューもその人のいろんな部分に触れられて良かった。もうラジオ形式にして流したいくらい、いっぱいいろんなお話が聞けたんですけども全部を書ききれなくって残念ですね。

衣装も当日ギリギリまでかかったし、本当に地獄のスケジュールでしたから。でも割と「ACTion STEAL」の評判も良かったので、また続けていきたいなと思ってます。当初は僕のメイクはあんなにサイケではなかったんですが、ルキノさんが人形という事で黒目のコンタクトを持参してくれまして、その仕上がりにあまりに可愛いフランス人形みたいになったんですね。僕のイメージはむしろ、ストレートで艶のある髪でもっと無機質な感じだったのですが。そこで急遽ガツンときて、僕自身を激しいメイクに変更してもらいました。そこで涙が黒かったらいいのにな、とか考えていたんですが成功して良かった。上手い具合に流れてくれた。本当に涙が流せたのは、僕の無茶な演出を完全に理解してくれたルキノさんのファーストカットのいい芝居見れて触発されたからなんだと思います。そこには本当に壊れゆく人形がいましたから。次はどんなのやろうかなぁ〜。今から楽しみです!